紀州のドンファン変死事件、被告に再び無罪判決
2026年3月23日、大阪高裁は「紀州のドンファン」こと野崎幸助さんの殺害罪などに問われていた元妻、須藤早貴被告に対し、一審の和歌山地裁に続き無罪判決を言い渡した。検察側の控訴を棄却する形となり、二審でも被告の有罪を立証するには至らなかった。元産経新聞記者の三枝玄太郎氏は、自身の取材経験を踏まえ、この判決の妥当性と司法の判断基準について詳しく解説している。
事件の焦点は、直接証拠が存在しない中での「間接証拠(状況証拠)」の評価であった。検察側は、須藤被告が事件前に「完全犯罪」や「覚醒剤」について検索していたこと、密売人と接触していたこと、死亡推定時刻に自宅で二人きりであったことなどを挙げ、殺意と実行性を主張した。しかし、大阪高裁の村越和弘裁判長は一審判決を支持し、野崎さんが自ら覚醒剤を摂取した可能性を完全に否定できないとした。
三枝氏は、判決を精査すると有罪にするには証拠が不十分であったと指摘する。特に弁護側が提示した「密売人B」の証言が決定打となった可能性がある。この人物は、須藤被告が購入したものは覚醒剤ではなく「氷砂糖」であったと証言し、薬物の入手経路に関する立証を揺るがせた。また、野崎さん自身が性的機能の回復を目的として覚醒剤に興味を持っていたとする知人の証言もあり、自ら摂取した可能性という「合理的な疑い」を払拭できなかった。